口説きの文句は割愛したい。
ただ僕は、正直に思った事をアヤに伝えた。
アヤの肉体を縛りたいこと、アヤの肉体を征服したいこと、アヤを支配したいこと。
お願い、ではない。僕は僕の願望を告げた。あとはアヤ次第だとわかっていた。
普段は冷静なアヤだが、驚いた顔をしていた。照れるような笑ったような困惑したような、少しだけ子供っぽい表情を浮かべた。
普段から人に魅せる立ち振る舞いをしているアヤの中身を垣間見たような気がした。
「何となく、普通ではないと思ってましたけどね」
アヤはそう言うと、誤魔化すようにグラスに注がれたワインを口に含んだ。
「少し考えてもいいですか?」
アヤの言う少しが一時間なのか一日なのかは分からなかったが、僕は頷いてショーを楽しんだ。
一時間弱のショーを観終えた後、僕とアヤは騒がしい店内で飲み続けた。そして、返事を切り出したのはアヤの方だった。
「さっきの話ですけど、正直怖いです。ただ、それ以上にしてみたいという気持ちもあります」
ショーの前に比べるとだいぶ酒の回ったアヤが言った。
僕とアヤは話をし、とりあえず縛ってみるところまでという結論でホテルへ移動することに。
ホテルに到着すると、僕らは別々にシャワーを済ませた。
酔いが落ち着いてきたアヤを、部屋の中心に全裸で立たせる。
その日、アヤにしたい事は決めていた。アヤを美しく縛り、時間をかけてアヤの身体を見ていたかった。
持参した数本のロウソクに火を点け、アヤを照らす。部屋の照明を全て落とし、BGMも切った。
静かな部屋で、ロウソクの炎に照らされたアヤを縛っていく。宗教的な行いのように厳かに、橙色に照らされたアヤが緊縛されていく。
うっすら汗を浮かべながら、アヤの呼吸は乱れ始める。息苦しさと、奪われていく身体の自由と、対照的に今までにないほど活動的になっている心臓と。
経験した事のないアンバランスな状態に、アヤは縄酔いをしていた。
調教やSMを経験した事のない方にはわからない感覚だと思うが、縛られた女性は「縄酔い」をする事がある。
緊縛された状態で酔ったように意識が遠のき、まわりの声や音も聴こえなくなる。だらしなく、とても甘美な状態だ。
アヤを日常から切り離す為に用意したロウソクは、揺れながら美しくアヤを照らす。
引き締まった肉体は、思っていた以上に艶っぽい。
何度か縛り方を変え、僕とアヤは縄酔いを楽しんだ。
暗闇の中で、アヤの息づかいと縄の擦れる僅かな音だけが聞こえる。
縛った状態で目隠しをし、縄酔いをしているアヤの身体にグラスの氷でよく冷えたウイスキーを垂らす。
暗闇の中で、アヤの絶叫が響く。
あらゆる感覚を遮断された状態で、冷え切ったウイスキーは刺激が強すぎるようだ。
僕は心ゆくまで、アヤの美しい痴態を眺めていた。