日記

氷と電球

liebeseele(リーベゼーレ)

 

手間のかかることが好きだ。

仕事の時には、時間をかけて作業をすることは好まない。かかった時間や生じた疲労は気持ちの良いものであるが、多くの場合それは自己満足だ。

苦労に対しての成果物がそれなりのものであればいいが、結果が伴わない時にも等しく疲労は訪れる。場合によっては徒労となることもある。

しかし、人間は常々矛盾する生き物だ。

例えば昨日のことである。夕方、その日の深夜は書斎で読書に没頭したいと思い立った。

読みたい本はある。上等なウイスキーもある。しかしウイスキーをオン・ザ・ロックにするための氷がない(冷蔵庫で作られる氷は好まない)。間接照明の電球も一つ切れていた。

僕はその二つを購入するために車を走らせた。

特殊な電球を含め、近所5キロ圏内で大体の買い物は片付く。僕はさっさと買い物を済ませると、マンションに戻って買ってきたそれらを然るべき場所におさめた。

この時点で午後六時。

食事をするには早いし、飲み始めるにも少々早いと思った。

逡巡した結果、思いついていた幾つかのアイデアをまとめる事にした。それは作品に関わる内容でもあるし、ブログの運営に関わることでもある。

ここ最近、僕はアイデアをまとめる時間を取れなかった。発想すること自体は随時、思いついた時にもメモを取っている。しかしそれを実用レベルに昇華させたり、アウトプットする事を行っていなかった。

デスクに向かってノートを開き、メモに取っていたアイデアを具体化していく。

没頭し、気がついたら時計は午後九時を回っていた。

時計を見た瞬間、きっと自分は苦笑いをしていたと思う。暇つぶしに始めたつもりの作業にかなりの時間を割いてしまい、求めていなかった疲労感さえある。

シャワーを浴びよう。そう思った時に、LINEの通知が来ていることに気づいた。

以前に飲み会で知り合った女性からの、飲みのお誘いの連絡だった。

確か25歳の、清楚な雰囲気の女性だった。酔った勢いで、少しだけ作家業の話をしたような気がする。

僕は快く応じる旨を返信し、シャワーを浴びる。身なりを整え、ジャケットを羽織って玄関を出る。

買ってきた氷と電球は役割を果たす事なく、外出する僕を見送った。

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