日記

トワイライト

liebeseele(リーベゼーレ)

昨夜(ゆうべ)の月を思い出せない。

 

僕は社会人になるまでを、東京の下町で過ごした。

東京は学校が飽和しているので、学校はいつも家の近くにあった。同級生と待ち合わせて学校へ向かい、放課後には近所の駄菓子屋へ行く。

それでも中途半端に都会であった地元は、時折僕に新しい刺激をもたらしてくれた。

大学生になり、初めて都心の学校に通うようになる。冬の寒い朝に自転車を漕いで駅に向かい、暖かい電車内で眠りこける。

行動範囲が広がり、僕は東京で好きな街を探した。

新宿、吉祥寺、高円寺、恵比寿。

どの街にも大人の匂いがして、僕の知っている東京ではなかった。

学生特有の自意識の高さ。僕は同年代が行かないような店を探し、通った。

恵比寿にあった二十人くらいしか入れないライブハウスでとある女性シンガーの唄を聴いたり、ミドルエイジがお酒を楽しむジャズバーで一人だけ珈琲を飲みながら居座る事も。

その時に知り合った音楽プロデューサーの方が上述の女性シンガーをプロデュースしていた。

男性は30代後半だったけれど、大学生の僕にずっと敬語で話してくれる穏やかな大人の男性だった事を覚えている。

残念ながらその後男性と女性シンガーが「売れた」噂は聞かなかったけど、僕は彼らが作る音楽を分かったようなフリをしながら聴いていた。分からなかったけど、好きだった。

当時の僕はこのブログの前身となるサイトの他に、SNSで短編小説や詩を書いていた(ちなみに少し前に掲載した「連鎖」もその頃に書いた拙作である)。

男性はその拙い作品を、年齢差など気にもせず評価してくれた。文章を書く仕事に就くべきだと声をかけてくれた。

当時の僕はSNSに書く物語を趣味程度に捉えていたし、読者から多少の反響があるだけで充分だった。

少しだけ、自分が同世代の人間と差別化をするには文化人でいる必要を感じていたのだと思う。

 

実家には広いベランダがあった。

下町には高層の建物がなく、月はそれぞれの建物を等しく照らしているように見える。

僕は夜にそのベランダで過ごす事が好きで、夏も冬も空を見上げていた。

小学生の時には同級生を呼んで獅子座流星群を眺めたし、中学生の時には好きだった女の子に電話もかけた。

そして、毎日何となく月のかたちを記憶していた(それは満月だったとか三日月だったとかざっくりとしたものだったけれど)。

 

先日実家に帰る用事があった。玄関の前には雨ざらしになって錆びた自転車が、昔の僕の抜け殻のように放置されている。

昔に比べて、夜空を見上げる機会が減ったように思う。

マンションの一室にこしらえた自分の城の中で過ごし、暖かい空気に包まれる。パソコンに向かう時間が増え、空を見上げる時間は減った。

今の生活に不満がある訳ではないけれど、ここに来るまでに置いてきたものはまた拾う事ができるのだろうか。

 

空を見上げる機会が減った今ではもう

昨夜の月を思い出せない。

六月の雨

モーニング・グローリー

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