一週間程前のことだ。
ほぼ使用していないFacebookを開いてみると、溜まってしまった友達リクエストの中に、とても懐かしい女性の名前を見つけた。
彼女は小学校・中学校の同級生で、一緒にクラスの学級委員を担当したことがあった。当時幼かった僕は、彼女を泣かせてしまったこともある。
リクエストを承認し、彼女のページを開いてみる。勤務先がとても有名な航空会社になっていることに気づいた。そしてその時に思い出した。彼女は小学校の時にキャビンアテンダントになりたいと言っていた事を。
彼女はとても賢く、中学を卒業するまで常に成績はトップクラスだった。
僕が在学していた中学校は東京の下町にある平凡な公立中学校だったが、僕の代には取り分け秀才が多かった。
承認後、僕からメッセージを送ってみた。
十分も経たないうちに返信が来て、彼女は最初の「久しぶり」以外は空いた年月などなかったかのようにメッセージを続けた。
僕は高校から地元を離れてしまったので、僕と彼女は約18年会っていなかった。成人式の時に、少しだけ姿を見かけたかもしれない。
そのまま電話をし、彼女の次の休日に食事に行くことになった。
僕の家の近くで会うことになり、僕らは待ち合わせをした。
現れた彼女は、とても良い18年を過ごした事がわかるような素敵な大人になっていた。あまり普段は考えないが、僕自身も大人になったのだ。
薄い化粧と、子どもの時よりも手入れはされているが変わらないロングの黒髪。向かい合って座っていると、デジャヴのように彼女は美しかった。
CAという特殊な職業に対して僕が構えすぎていたせいもあるのか、彼女は時間を感じさせないほどに穏やかで壁を作らなかった。
とても楽しい時間を過ごし、僕らは別れた。
その数日後。
コロナの影響でフライト本数(ないしは出勤日)を減らしているらしい彼女から誘いの連絡が来た。
連絡が来た日の夜に、再び都内某所で僕らは会った。
久しく感じていなかった、どんな計算もいらない心地良い時間だった。
彼女は僕が複数の女性に首輪をかけている事は当然知らないし、僕の見立てでは彼女はサブミッシブではない。
ただの懐かしい友人として過ごせる時間は、間接照明のように配慮のある穏やかさがあった。
こんなに美しくて気立ての良い彼女が、今日に至るまでなぜ結婚をしていないのかは知らない。少しだけ、疲れている雰囲気はあった気がする。
彼女から話して来ないそのデリケートな部分には、こちらから触れることもない。
僕はウイスキーを、彼女はワインを楽しめるくらいに2人は大人になったのだ。
「○○くん、明日はお休み?」
夜も更けた頃に、不意に彼女が尋ねてきた。
「休みだよ。海でもお連れしましょうか」
僕のくだらない冗談に、彼女は答えた。
「それも良いですねぇ」
そんな簡単なやり取りが切っ掛けで、僕らは12時間後に再度待ち合わせをする事にした。
懐かしい彼女との時間は、波の音に似ていて心地が良い。彼女を通して、僕は昔の自分を見ているのかもしれない。
18年前、僕らはお互いに特別でも何でもなかった。ただの同級生で、多数決で決まった学級委員だった。こんなに沢山の時間を過ごす間柄でもなかったはずだ。
誰をどういった目線で見るか、受け止めるかは時間と共に変化する。
それはご主人様を見る奴隷の眼も、奴隷を撫でる主の手のひらも。
彼女ができるだけ静かで穏やかな夜を過ごせたら良いと思う。
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