日記

静まり返った砂漠のように

liebeseele(リーベゼーレ)

 

ある従者が仕事の関係で海外移住をする。

「M女のための調教ブログ」にも調教記事として掲載しており、とても素敵な時間を共有できた相手だ。

先日、その従者が旅立つ前の最後の時間を過ごした。

定期的に日本に帰って来るようなので最後というよりも会う間隔が今よりも開くだけではあるが、一旦の区切りではあると思う。

 

最後の時間は激しい調教ではなく、静かな部屋で食事をすることを選んだ。

都内の上層階にある個室で、テーブルをはさみ知り合ってからのことを振り返る。

BGMはなく、空調の音すら聞こえない。

仕事帰りの彼女は落ち着いた服装に身を包み、奴隷である時間とは違った魅力を放っていた。

 

僕らは限られた時間の中で様々なことを話した。

幼い頃のころ、知り合ってからのこと、仕事のこと。

彼女が砂漠のある国に行くこと。

 

誰かが離れた場所に行ってしまう時、やはり世界は地球儀よりもずっと大きいということに気づく。

今生の別れではないのだけれど、それは取り返しがつかない距離のように薄情になる。

目覚める時間がずれ、夢を見る時間がずれる。

僕にできることは、彼女が遠い異国においても健やかであってほしいと願うことだけだ。

 

時折、夜の砂漠のように部屋は静まり返った。

 

ただ僕らはもう、無言に焦る関係ではない。

止まった空気の中、お互いの頭の中では様々なことを思い出している。

何気ない会話のひとつひとつが、お互いの存在を確認する作業のようにおごそかに思えた。

 

毎日誰かが出逢い、別れる。

それは普遍的な恋愛であっても、少しだけ特別なものでも。

再会の叶わない人々もいるだろう。

 

お互いが再開を願う関係になれたことはとても幸福だ。

この部屋での会話の続きをする日が来ることを楽しみに待っている。

 

 

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