日記

2つの人生がふれあう幸福

liebeseele(リーベゼーレ)

 

朝起きてリビングの窓を開ける。

冷えた空気の中に夜のぬるく、くぐもった空気が霧散していく。

部屋の中で夜と朝が入れ替わっていく間に珈琲を淹れると、マンデリンの甘い香りが部屋の中を満たしていく。

 

ソファに腰掛けてスマホを開くと、夜のうちに届いていた連絡が溜まっている。

僕はベッドに入る時間が早いので、夜の落ち着いた時間に連絡をくれる従者へは返信が翌朝になってしまう事が多い。

メッセージのひとつひとつに目を通していく。

すでに関係を持っている女性。ブログからの新しい調教希望の問合せ、悩み相談。

それぞれの温度感で掛かれた文章は、その人の人柄や性格をよく現している。

ここに書かれた文章を心地良いと感じる人もいれば、忌避したくなるような人もいるだろう。

それでも何かしら伝えたいと思って下さった方が、ブログの問合せフォームから筆を走らせているのだと思う。

それは夜の刹那的な昂りや情動かもしれないし、送ったことに後悔をする女性もいるかもしれない。それでも僕は頂いたメッセージを自分なりに解釈し、返答をしたためている。

 

関係を持つことになった女性とは、SMや調教以外の話を沢山する。

逆説的なもので、調教を行いたいと思う女性はその服従願望以外の部分に興味を抱く。

その女性が何を綺麗だと思うのか、何に不安を抱くのか。

家族のこと。昔好きだった人のこと。嫌いになった人のこと。嫌いになりたくなかった人のこと。

楽しい話ばかりではなく、本人にとっては闇のような部分もある。

ただ僕は、綺麗な部分だけが人間ではないと思うのだ。

 

沢山の話を聞いていると、その女性の人生に触れられることを嬉しく感じる。

自分の人生に触れてくれたことを嬉しく思う。

 

大げさではなく、主従関係を経験するとしないとではその後の人生が大きく変わってしまう。

自分の中にある性質や願望から眼を逸らさず、その部分を大切にしたいと思った結果女性はブログから問い合わせのボタンを押す。

とても不安や恐怖を含む行為だと思う。読んでいる文章とはまったく異なる人物が現れるかもしれない。

それでも接触をしてみたいと思ってくれた事を、この邂逅に可能性を感じてくれた事を。

「奴隷」としての自分を経験してみたいと思ってくれたことが嬉しい。

 

これまで多くの女性と関係を持ってきた。

数を誇る意図はなく、関係を持ったことで不幸になった女性もいる。

 

その女性の人生に触れ、少しだけ手を加える。

もしかしたらそれは良くできた料理に余計な調味料を足してしまうように蛇足かもしれない。

しかしドミナントの手が加わったことで、生活が華やかになる女性がいる。

支配を受けることで自由になる女性がいる。

 

良好なパートナーと出会うということは、自分を正しく解釈してくれる相手と出会うということだと思う。

過剰でもいけないし、曲解でもいけない。正しい熱量と温度感で、自分が最も自分らしく居られる温度で受け止めてくれる相手と。

関係を持った女性と日常的な話をしていると、目の前の女性に被虐・服従嗜好があるということを忘れそうになる。

それ程までに従者たちは女性として素敵だ。

ただ一部だけ、僕と従者でしか解釈の合わない部分がある。

そしてそれは2人の間で理解が出来ていればいい。決して誰かを納得させる必要はない。

 

主従関係を通してお互いの人生に触れられることを、僕は自分の人生や生活にとって大きな幸福だと受け止めている。

驕ることはなく感謝をしたい。

僕の生活は、彼女たちのおかげで華やかだ。

 

いつかまた、萩の季節に

切り取った時間を

 

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