夏の暑い日、とある用事で都会を離れて某県にある海沿いのヴィラを目指していた。
東京から車で数時間。
僕は一人の女性と同じ時間を過ごしていた。
お互いのことを話しながら、僕らは車を走らせ日々を過ごしている街を離れていく。
距離が延びるほどに日常を少しずつ置いていくような、そんな旅だった。
辿り着いたヴィラでは一緒に行った女性と少し特殊な時間を過ごしていた。
そこでの出来事は女性に限定して公開しているので、興味がある方はxから連絡をしてほしい。
そこではとても素敵な時間を過ごしていたが、暗くなってからふと一人で海に向かって歩いてみることにした。
僕らが訪れた場所は驚くほどに光がなかった。
闇の中では聴覚優位になり、草の重なる音や波の音が明確な形を持って聞こえてくる。
手元のわずかな光を頼りにしながら僕は海に辿り着いた。
海辺では様々な音が呼応していた。
波が砕ける音、圧倒的な質量をもった風、どこか遠くで聞こえる金属の悲鳴。
それらすべてがぼんやりと月光に温められ宇宙で混ざっていく。
遠くにいる人のことを思い出した。
不幸にしてしまった人。ほんの僅かに幸福にできた人。
離れてしまってからの方が愛していたことに気づいた人もいる。
一緒にいる時にはそこまで好きではなかったように感じていたのに。
今僕は複数の女性と関係を持っているし、一緒にここを訪れた女性もいる。
彼女たちはとても鮮やかで透き通った声で僕を呼んでくれる。
しかしそれもきっといつか思い出さなければいけない音になるのだろう。
それぞれとの関係は形容すれば同じように聞こえるのに、それぞれがそれぞれのどれとも似ていなかった。
似たような喜びや悲しみはなく、彼女たちは皆オリジナルだった。
人は自身の不誠実を隠すために誠実を語る。
それすらも宇宙が混ざる音に重なり、きっとどこかで聴こえるのだろう。
三次元までしか想像できない僕らの思いやりは、きっといつも足りない。