日記

奴隷にするための準備

liebeseele(リーベゼーレ)


半年くらい前の話。

現在勤めている会社で仲良くしてもらっていたYさんが転職し、スイスに本社のある某食品メーカーに転職をした。

彼が転職をしてから2か月程経ったある時、新しい仕事も落ち着いてきたからということで飲みに行くことに。

待ち合せ場所はある金曜日の新橋だが、僕と彼の他に、彼が以前飲み会で知り合ったという女性も参加することになっていた。

当日、僕が遅れて飲み会の店に到着するとすでにYさんと知り合いの女性が飲んでいた。

女性は綾菜(仮名)さんといった。

28歳の綾菜さんは大手自動車メーカーの人事を担当しており、豊かな胸、スタイルの良さ、ロングの黒髪が印象的な美人だった。

よくよく話を聞いているとYさんと綾菜さんは合コンで知り合ったらしく、後日会う日程を調整しているうちに同じく会う予定だった僕と日程をまとめた様だった。

二時間ほどその店で楽しくお酒を飲んでいたが、その内Yさんが机に突っ伏して寝始めた。Yさんは致命的に酒に弱いのだ。

僕と綾菜さんは男女の関係の話をしていた。綾菜さんの元カレのこと、最後にしたセックスのこと。お酒の入った綾菜さんは、普段のストレスが溜まっていたのか饒舌に話し続けた。

その内話題は、僕の恋愛についての話になった。

僕は自分のことをほとんど話さない。決して隠している訳ではないけれど、僕は女性の話を聞いているのが好きだ。

綾菜さんは自分が話してしまった反動からか、しつこく僕の性事情を知りたがった。僕は酔いながらも上手くはぐらかしていたが、「しばらく普通のセックスはしていない」とだけ答えた。

その時の綾菜さんの表情、沈黙、息をのむ仕草。カチリ、とスイッチの入る音が聞こえた。

綾菜さんは僕が暗に示した「普通ではないセックス」に惹かれているのがわかった。そこから余計な話はせず、話題を切り替えてお互いの仕事の話に自然に軌道を戻していく。

程なくして、僕たちはお店を出た。酔いつぶれたYさんをタクシーに乗せて送り出し、綾菜さんを駅まで送り届けた。

ずっと何か言いたそうな表情の綾菜さんを駅まで送り、簡単な挨拶だけをして見送った。

彼女は良い奴隷になる。

根拠のない、確信めいた気持ちがあった。しかしそれにはまだ、彼女の中で「普通ではないセックス」への興味を育む必要があった。

今夜は何もしない。何もさせない。

踏み込ませないことで、彼女は夢中になる。

そう思い、後ろ髪をひかれるように改札に消えていく彼女を見ていた。

その後彼女から「二人で会いたい」と連絡が来るまでに、それほど時間はかからなかった。

 

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