毎年冬になると、雪の多い街に一人旅へ行く。地元民の生活を脅かす膨大な白は、皮肉にも旅行者の心を穏やかにする。
今年は世相から外出を控え、都内にある自宅で大人しく年の瀬を過ごしている。
僕は日々の様々なことをメモに収めており、それを年末に見返している。
新たに出会った人について。気心の知れた従者について。思いついた詩。書き留めておきたい感情。作品に収めたい一節。
「好き」が生まれること、「好き」が死ぬこと。
指先から流れる血、骨髄で新たに生産される血液。
スクラップ・アンド・ビルド。
日々多くのことが循環し、僕らは同じままでは居られないのだと理解する。
理解ができた時、少しだけ寂しくなる。
最後だと認識した時、誰かの感情が死んだのがわかった時。肉体的な死よりも、感情の死の方がひどく残酷だと知っているのが大人なのかもしれない。
すべてに対して綺麗である必要はないし、微笑む必要はない。
あの人は今なにを見ているのだろう。何を美しいと思うのだろう。
同じものを食べているのに、なぜこんなにも味が違うのだろう。
何も変わらないはずの12月31日と1月1日はなぜ何もかも違うのだろう。
人はきっと、同じ油絵を油の臭いがする近さで一緒に鑑賞できる相手を、同じ詩を綺麗だと思える相手を探している。
100%の相手に出会うことはきっとなく、その僅かな不足を愛おしいと思える相手に巡り合いたいと時間を彷徨う。
日々多くの人が何者かになりたいと願い、誰かに出会いたいと思っている。
明日から真っ白になる日常で、素敵な出会いが続き始まることを祈っている。
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