日記 心象スケッチ・小説

さよなら、アルタイル

liebeseele(リーベゼーレ)

 

ある週末、東京を離れて一人で旅に出掛けた。

 

季節は夏から秋に変わる準備をしている最中で旅先にも服装に迷った人々が散見される。

心配性や寒がりは厚着を。近場の外出らしき人は薄着で。

僕は薄手のコートを羽織って懐かしい街を訪れた。

 

そこは友人が住んでおり、幼い頃は数か月に一度訪れる土地だった。

成長するにつれて彼に会いに行くことはなくなってしまったが、今回行きたい宿がその街の近くにあったことから20年以上の時を経てその街を訪れた。

薄らと覚えていた街並みはすっかり変わってしまっており、見た事もない景色となっていた。

それでも不思議な懐かしさがあり、僕は閉じたシャッターばかりになってしまった街を歩いた。

 

喫茶店に入り、楕円形になったコーヒーを口に運ぶ。

店内には気の利いた音楽が流れている訳ではなく、隅にあるテレビから微かにワイドショーの音が漏れていた。

 

ふと、昔この街に来るたびに訪れていたプラネタリウムのことを思い出した。

市営の小さな施設でその友人に会うたびに一緒に足を運んでいたことを覚えている。

当時は彼の母親が車で近隣に遊びに連れていってくれることが多く、その中のひとつにプラネタリウムがあったのだ。

 

手元のスマホで検索をしてみると、二週間後にその施設が長期休館に入ると書かれていた。投影機の劣化による入れ替えのためらしい。

時計を見ると次の上映時間に間に合いそうだったので、僕は久しぶりにその施設を訪れることにした。

タクシーで移動をするが、流れていく街並みに見覚えや親しさはない。それでも自分が懐かしい場所に向かっているのを感じる。

 

長い年月を経て、僕はそのプラネタリウムに足を踏み入れた。

数十年運営している市営の施設ならば劣化が目立ちそうなものだが、そこは綺麗に星を投影するために球状のスクリーンが潔白に保たれており、席についてしまえば最近できたプラネタリウムと相違なかった。

 

施設が小さい分だけ星を近くに感じる。

そこでは録音ではなくリアルタイムでナレーターが星の説明をしてくれる。

約30年程の年月 星を映し続けた投影機への愛情と労い、星座とその綺麗な名前の由来。

僕は昔そこで、初めてアルタイルを、ベガを、デネブを、それらを結ぶ夏の大三角形を知ったことを思い出した。

 

上映後、明るくなった館内で投影機に近づいてみる。

表面はすっかりくすんでしまっており「ああ、彼は役割を果たそうとしているんだ」と思った。

子どもの頃の自分にも、大人になった現在の自分にも同じ感動を与えてくれた。

 

自分が大切にしたい相手に対して果たせる役割は何だろうと考える。

優しさ、親切、愛情。そのどれもが自分勝手で的外れかもしれない。

 

不思議なことに、穏やかさの中には懐かしさがある。

自分が受け取っていた愛情に似た懐かしさ、受け取れなかった懐かしさ。

大人になるつれ人は複雑になっていくので、ないものねだりでこんなに優しい相手を傷つける。

親切や優しさの周波数が合うということはとても大切な感性だ。

 

時おり星を見るなどして、星と自分との距離感を測ってみるのもいい。

自分の感受性を確かめることができるかもしれない。

今のあなたは、正しく与え受け取ることができているだろうか。

 

 

 

いつかまた、萩の季節に

酸素の薄い朝

 

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